二人の運命を分けた細かな要因は分からない。しかし、二人の運命を分けた大きな力は示されている。トレープレフもニーナも才能に恵まれたうえに、才能を育てるために必要な大きな不幸をも背負っていた。トレープレフがニーナと違うのは、あるいはニーナに比べてより不幸であったのは、彼が生産的な不幸に出会えなかったことである。どのような不幸が才能にとって生産的であるかを予測することはできないが、才能や個性にとって致命的なもの、もし才能や個性を生かそうと思うならとにかく耳をふさいで逃げだすしかないというような世界があることははっきりしている。


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