黄昏のシンセミアの感想

ゆしゅちゃんがやるかもしれないからかくしておく。ネタバレをいれずして話ができないから。

 評価としては上の下から上の中くらいの出来だった。安心のあっぷりけ。ただ、題材や世界設定からするともっともっと良い作品ができたように思う。
 というのも、実妹ルートからシンセミアのルートへいたるという過程のはずなのに、さくやでないといけない理由がそれほど強くなかったというのがまずあげられる。たとえば極端に言えば、赤い石の持ち主は直前までしょうこちゃんだったのだから、しょうこちゃんルートからあの展開にもなりえたはず。もちろん初代の記憶をさくやが受け継いでいるからこその展開なのだろうけれど、それでは少し弱いように感じた。
 また、シンセミア=実妹ルートが若干世界系*1になっていたのも少し残念かなと思う。例えば実妹ものといえばヨスガノソラが有名であるけれど、この場合は学校というコミュニティからの拒絶という形で社会という概念をきちんと挿入していた。シンセミアでは、その社会というのが叔母との会話くらいにしか存在しなくて、後は主人公が勝手に社会からの拒絶があるだろうなーくらいにしか思っていない。 
 また、シンセミアはキャッチコピーに「禁断」とある。禁断というのは社会という集団が存在して初めて規定されるものであるから、このお話の中に社会というのは絶対に不可欠な要素であったとおもう。問題が起こってから解決されるまでの過程にもっと絡める人はいたはず。ラストのシーンがさくやと主人公の二人だけというのは非常に妥当だけれど、それまでの過程をもう少し詰め込めばもっと良い作品になったと思うのだけど。あれでは結局あの兄弟が勝手に問題を解決しただけで、「禁断のシンセミア」ぽかったのは、主人公が「これは人間の世界にあっちゃいけないものだ」と勝手に判断したところだけになってしまっている。いろはでも誰でもいいから、その判断に他の人も絡める必要があったのではないか。それこそが禁断だと思う。
 主人公と妹との関係に、社会というものをうまく反映できれば、黄昏のシンセミアという物語の輪郭がもう少しはっきり現れたのではないかなとおもった。よくも悪くも妹ゲーになってしまったので、物語の輪郭があやふやになってしまったというのが、総評。

*1:世界系とは、僕と君との関係が世界の危機に直接結びつくものを指すが、ここでは「僕と君」と「危機」の間に「社会」がないという状況を指して使った。