とれいん

子供は、小さい頃に「人に迷惑をかけてはいけません」と教えられました。
大人が、何故彼にそう教えたのかはわかりません。
もしかしたら、「自分がそうでない」事を隠す為に言ったのかもしれません。
そう教えることによって、「自分はそうではない」と一時的に思い込むためかも知れません。
理由はわかりませんが、「子供がそう教えられたこと」は変わらず、
何も知らない子供は、「人に迷惑をかけないこと」を覚えました。
時は流れます。
他の子供達は、「人に迷惑をかけないこと」の上に「効率よく作業をこなすこと」を覚えました。
そして、効率よく移動するために、自動車がたくさん通っているところを、何の正統性もなく――――それはただ、少年の目から見たものであるが故だったのですが――――横切ってわたりだしました。
彼らは言います。
――――「だって、その方が効率よく移動できるじゃん。」
しかし子供は言うのです。
――――「でも、小さい時に、人に迷惑をかけるなって教えられたよ?」
それを聞いた彼らは笑いました。
――――「大人たちを見てご覧。みんな自分の効率を最優先に行動してる。オープンソースを私物化したり、命の恩人を殺したり。君だって昨日、とろとろ遠回りしてるから先生に怒られたじゃないか。」
子供は納得がいきません。
――――「あれはおかしいよ、どうして先生達が怒るのさ。」
――――「君が効率よく移動しないからだよ。効率よく行動しなさいって教えられただろ?」
子供は問うのです。先生達に。世界に。



――――「だったら、どうして、僕にあんなこと教えたりしたの?」